8月9日・10日 富士山:田子の浦から山頂往復 加藤、苫米地
■ 8/9田子の浦港白灯台0:00…3:35よもぎ湯…4:50国道469号交差点…6:00MTBレスト地点…8:45Pica…9:35西臼塚…10:55旧料金所入口…12:20ガラン沢…15:10宝永火口・六合目分岐…15:40六合小屋…17:20新七合小屋…18:05元祖七合小屋…19:00八合目小屋…19:55九合目小屋…20:40九合五勺小屋…21:45富士宮口山頂(1時間仮眠)…23:20剣ヶ峰山頂
8/10…0:15九合五勺小屋…0:50九合目小屋…1:35八合目小屋…4:00六合小屋…4:35宝永火口・六合目分岐…11:40国道469号交差点…13:30よもぎ湯…17:10田子の浦港白灯台
★ 高校生との富士登山がコロナ禍で宝永山になってしまったので、加藤さん夏の恒例行事、田子の浦から富士山頂往復に参加させていただいた。このルートは富士市設定の海抜0メートルから富士山頂を目指す「富士山登山ルート3776」(全長約42km)を二日間で往復するというもの。加藤さんはこの10年間毎年夏に一人で挑戦し、7回は完歩しているという。道の駅富士に車を駐車し自転車で白灯台へ向かう。すでに到着していた加藤さんは自宅から約1時間かけて歩いてきたという。とても真似できない。0時ちょうどに白灯台を出発して市街を歩く。真夜中でもひどい蒸し暑さでほぼ1時間ごとにコンビニで休憩する。一人の若者が重そうな皮登山靴でしばらく抜きつ抜かれつしたが、大渕にある最後のコンビニを出てからは姿を消した。大渕公園を過ぎると空が白みはじめ富士山が姿を現わす。八合目小屋の光が明けの明星のように輝いている。国道469号を越えると植林帯の林道歩きになる。単調ではあるが標高が上がるにつれて蒸し暑さからは解放され順調に進む。天照教林道に出ると山腹のトラバースが延々と続く。富士山スカイラインに合流してしばらくでキャンプ場Picaで水を補給。スカイラインは大型車の往来繁く路肩が狭いので怖い。つよい陽射しに灼かれつつ11時前に旧料金所入口に到着。いよいよ山道に入り苔むした原生林の中を気持よく歩くが、傾斜が緩やかでなかなか標高が上がらない。御殿庭を過ぎるとようやく樹林帯から抜けだすが大粒の雨が降り出す。宝永第二火口の縁あたりでは土砂降りとなる。落雷を恐れて六合目小屋に飛び込むまでは生きた心地がしない。大休止し熱いきつねうどんをすする。幸い雨が上がり、雨具のかわりに長袖シャツを着て高山帯にそなえる。登山道はむしろ歩きやすいが、先が長~いので足を使い過ぎないように小屋ごとに休み休み登る。八合目からはヘッドランプに加えて手にもライトを持っての登りとなる。幸い月が明るくて歩きやすい。雲海上の月夜の絶景。風もさほどでもなく22時前に富士宮口山頂に到着した。郵便局の入口でツェルトをかぶって約1時間仮眠。ほとんど眠れなかったが加藤さんはいびきをかいて寝ていた。さすが!11時に起きて剣ヶ峰をめざす。巨大な火口が真っ黒な口を開けていて不気味。剣ヶ峰直下は岩盤が露出していて足が滑って危ないのでルート左側鉄製の手すりをたどって山頂に到達する。山頂部では数人が雨具のまま横たわっていてギョッとする。たぶん御来光を待っているのだろうがあと5時間もある。田子の浦港で採取した砂を山頂の石柱に撒く。下界の救急車のサイレンの音がよく聞こえる。遠く御殿場、横浜方面の夜景、富士、清水、静岡方面の夜景が明るい。さて富士山の夜間登山は何度も経験しているが夜間下山は初めてだ。普通御来光をめざして登るので夜のうちに降りる人はいない。危険個所があるわけではないがちょっとした転倒も大けがにつながりかねない。ライトで足元を確認しながら一歩一歩確実にていねいに下る。八合目を過ぎると御来光を目指す登山者とすれ違いながら下る。六合目でようやく夜が明ける。宝永山の真っ黒なシルエットに東の空が真っ赤に染まってゆく。御殿庭への下山ルートについて加藤さんと自分の見解が分かれてしばらく時間をつぶしたが、無事正しいルートにもどる。美しい原生林だが足腰の痛みが出て来てとても長く感じられた。旧料金所でアスファルトの上に飛び出す。田子の浦港からの青年登山者、その後すぐに4人組の欧米人グループが入れ違いに登っていった。ここからのロードは最難関という予想どおり加藤さんのペースが上がり、早くもついていくのが大変だ。腰、膝、足の裏が悲鳴をあげる。Picaで水を補給すると一気に荷が重くなる。それだけ軽いのだが肩にジワジワ食い込み始める。天照教林道に入ると炎天下の中登り返しもあり玉の汗。ようやく下りの林道に入る。今度は霧が出て来てジメジメと暗い植林帯を延々と下る。なんの特徴もない林道は気が狂いそうになるほどの単調さだ。加藤さんは自衛隊が左右の草むらでカムフラージュして訓練しているという。それは幻覚じゃないかと思ったがこちらも自信がない。国道469号を越えるとようやく一般道路で自販機も出てくる。ただ何を積んでいるのか巨大な大型車が猛スピードで往来し、その騒音と爆風にうんざり。標高が下がるにつれて炎天下の酷暑に苦しむ。休みごとにコンビニで冷たい飲み物をガブのみ。最後は港へ抜ける高架の歩道が工事中で通れずおおきく吉原駅がわに迂回。両足裏全体が豆になったような痛みでホウホウのていで白灯台へたどりつき、先導していただいた加藤さんと握手。これからまた歩いて自宅まで戻り、明日は朝7時からお仕事とのこと。加藤さんすごすぎる。自分が一番ホッとしたのは残置していた自転車が無事だったこと。ペダルを漕ぐのも足の裏が痛いほどでよろよろで道の駅にたどりついた。ここから家に着くまで何度も幻影を見た。石の模様が文字化けしたり、草が人に見えたり、妖精さんがいっぱい飛び交ったり。
ふりかえると山頂まで、または山道を下り終えるまでは気持ちがしっかりしていたが、下りのロードでは精神的に切れてしまった。「人生下り坂最高!」とは火野正平さんの名言だが、下り坂はけっして楽ではない。老いや死へ向かう下り坂、その中でも夢や目標を持って生きることが大切だと思った。誰に誇ることもなく坦々と10年間この山行を繰り返してきた加藤さんの偉大さを体感する山行だった。貴重な体験をさせていただき大感謝です。ありがとうございました。